前回、マーケティングとは「顧客の喜びを勝ち取るための活動」と記しました。「”誰に””何を“”どのように“どのように提供するかに関わる諸活動である」との明治大学大石教授の言葉をお借りすれば、より具体的にイメージできると思います。この中で最も重要なのは、“誰に”ということになります。誰=ターゲットが決定してから“何を”“どのように”と発展させていきます。

セグメンテーションと顧客分析

“誰に”というと、まずセグメンテーションという言葉を思い浮かべる方も多いと思います。同時に顧客分析という言葉が頭に浮かぶ方もいると思います。顧客分析は、デモグラフィック分類からスタートし、現在では顧客の潜在的なニーズである”インサイト”を探る試みにまで発展しています。言い換えれば、顧客がはっきりと認識していない次の価値を見つけることです。その価値にどこまで近付くことができるか?”が次のステップになるといえます。

化粧品の場合、購買の意思決定が他の工業製品に比べてライフスタイルや、エモーショナルな要因が大きいとこれまでの経験から感じています。客観的な尺度だけでは測りきれない、当人の感じ方、思い込み、美容への興味などが大きく影響していると見受けられるからです。わかりやすい例えでは、健康な肌の人が自分は敏感肌だと思い込んでおり、敏感肌用の化粧品を購入してこの製品は効果がないと判断する…というような状態です。こうありたい自分と実際の自分の乖離があるのが化粧品販売の難しいところです。もちろん、肌は精神状態を表すと言われるので、その製品の効果を信じて安心して気持ちよく使っていただくのは非常に重要です。

現在ドラッグストアや通信販売での化粧品の売り上げは、全体の半分に迫ろうという状況です。それは、自分の肌状態を自分で判断して化粧品を購入する方が多いということなので、全員がベストな製品を選べていないことも想定できます。

個客価値マーケティングへ

現在のような所得が増加しない環境の下、自分にとって真に価値があると信じられるモノには高額でも対価を支払い、そうでないモノは廉価品で代替させるかまたは購入しないという傾向が顕著になっており、百貨店の化粧品ブランドが復調傾向にあります。また、自分に価値があるか否かは友人のアドバイスや共感、またはSNS等の口コミによって左右される傾向も強まっています。

新しい顧客価値、インサイトは、革新的な製品でなければ成立しない訳ではありません。いかに顧客視点に立って考えるかが重要なのです。買う立場になって、喜びを感じる次の一手を考えてはいかがでしょうか。